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2024.03/26 マテリアルズ・インフォマティクスとは

マテリアルズ・インフォマティクスとは何か。機械学習やデータマイニングなどの情報科学の技術を用いて、材料開発の効率化を図る分野や技術のこと、と説明される。


ここで問題となるのは、機械学習の意味である。理由は機械学習の中に統計手法や多変量解析なども含める、というのが今の考え方である。そしてAIのような手法は深層学習としてカテゴライズされる。


もっと素直にあるいは平易にデータサイエンスで研究開発の効率化を図る分野や技術ではいけないのだろうか。この説明を否定する意見は無い、と思っているが、わざわざ機械学習として言いたい背景に先端の香りを載せたい、という魂胆が見え隠れする。


第一次AIブームが終わりかけた頃に日本で情報工学科設立ブームが起きている。その時、情報工学の目的としてデータサイエンスがあった。統計手法が大型コンピューターの利用により発展し、多変量解析という手法が普及した。


ゴム会社に入社した時の同期に情報工学科出身の優秀な新入社員がいて、情報工学について熱く語ってくれた。そのおかげで学ぶつもりの無かった情報工学を趣味として勉強し始めた。


この趣味を加速したのは、彼と同じグループで新入社員の研修を1か月半行ったことと、配属先の上司が80万円のローンを部下である当方に課してパソコンの購入をせまった出来事がある。今ならパワハラによる犯罪だ。


この辺りは、過去にこの欄で書いているので探して読んでいただきたいが、大卒の初任給10万円の時代に80万円のローンは大変だった。ゆえに、必死でデータサイエンスを勉強し、日々の材料開発にデータサイエンスを使うようになった。


すなわち、脅迫的な80万円のローンにより、マテリアルズ・インフォマティクスを40年以上前から趣味としてやらざるをえなくなったのである。今から思えばすごい上司とのめぐり逢いかもしれない。


ところが、当時のゴム会社の研究所では、マテリアルズ・インフォマティクスを科学として認めていなかった。人事部は年間1人50万円かけて、新入社員に基礎統計の研修(日科技連主催)を課していたが、研究所ではこれを形骸化していた。


もし基礎研究所が積極的に取り組んでいたら50年前からマテリアルズ・インフォマティクスが発展していたかもしれないが、基礎研究所ではこの手法を非科学的として、嫌っていただけでなく積極的に業務に取り入れようと努力する社員を迫害していた。当方は会議前になるとFDまで壊され妨害されたのである。

今は良い時代になった。非科学的なマテリアルズ・インフォマティクスを日本のアカデミアが率先して研究に取り入れ、某コンサル企業は、100社以上指導したという。

いくらで請け負って指導されたか知らないが、弊社ならば各企業の風土やご予算に応じご指導いたします。また高額なソフトの導入ではなく、無料のPythonの導入をご指導いたします。

安い!分かり易い!マテリアルズ・インフォマティクスにご興味がございましたらお問い合わせください。導入におけるマネジメント方法からご指導いたします。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.03/24 久しぶりの学会発表(2)

科学的に証明されたホウ酸エステルとリン酸エステル併用系の技術について、データサイエンスを用いホウ素とリンの難燃化寄与率を40年以上前に求めている。


すなわち、マテリアルズインフォマティクスを40年以上前から実施していました、という内容が3月20日の発表です。これだけではつまらないので、今流行の深層学習の手法で解いた結果も加えました。


機械学習を研究対象にされている方の感情を逆なでするような発表になっては申し訳ないので、ここにタグチメソッドの結果も加え、3種類のデータサイエンスの手法の比較、という内容でまとめている。


30年以上前に転職した時の学びを活かして発表しましたところ、座長がツボをついた質問をしてくださった。樹脂補強ゴムの開発ではどのようにデータサイエンスを活用したのか、という、待ってましたと言いたくなる良い質問です。


データサイエンスを科学の研究に導入するときに注意しなければいけないのは、味噌糞一緒にデータを処理してはいけない、という点である。すなわち、データマイニングにより得たい知の目標に応じてデータを前処理する必要がある。


昔は、データベースなどという言葉でデータをひとくくりとしていたのですが、今はデータウェアハウスという呼び方になっているのはこのためだ。


すなわち、発表では詳しく説明できなかった、データサイエンスを研究開発で活用するときの大切なノウハウの部分を丁寧に回答しました。


40年以上前からデータサイエンスを活用していました、と自慢しているような回答となりましたが、発表を盛り上げていただき座長をやられていた斎藤先生に感謝しております。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.03/23 久しぶりの学会発表(1)

この10年、マテリアルズインフォマティクスの講演が多くなってきたが、中には学会で発表するには疑問のある内容を見かけるようになった。


そもそも、データサイエンスを科学の研究の場に導入する意味を正しく理解していないと思われる研究者も増えてきた。


まず明確にしておきたいが、イムレラカトシュが指摘しているように、科学の方法として完璧な方法は否定証明である、ということを充分に理解していただきたい。


当方は、「電気粘性流体の耐久性問題を界面活性剤で解くことができない」という否定証明された現象について、データサイエンスを用いて一晩で「耐久性のある電気粘性流体を界面活性剤の添加で実用化レベルまで仕上げた。」


その結果、非科学的方法で事業を立ち上げようとしたとして、ゴム会社の研究所で袋叩きに合い、写真会社へ転職している。30年以上前、科学こそ日本を発展させる、と多くの企業は盲信していた時代の事件である。


「技術の日産」と、明確に「技術開発で科学を利用しようと」している企業は、少なかった。科学を追及している企業が日本に多かったために失われた30年となった。事業を支えるのは技術である、とようやく声を出して言える時代が日本にも来た。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.03/22 高分子のトラブルを解析したい方へ

当方のノウハウでさらに社会に貢献しようと形式知の部分について学会活動も始めました。経験知につきましては、トラブル解析の実務について概略をまとめてみましたのでご活用ください。今後高分子材料の寿命耐久性評価法や破壊に対する考え方についてもまとめる予定でいます。また、セミナーも皆さんのリクエストにより行ってゆきますのでご相談ください。


2024年3月現在、Amazonの電子書籍Kindle限定で販売中です。

価格は2,000円となっております。
下記は書籍目次と索引のサンプルになります。

書籍タイトル及び最終ページをクリックすることで、販売先サイトへと転送されます。



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カテゴリー : 一般 電子出版 電気/電子材料 高分子

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2024.03/21 ゴム・プラスチックのトラブル(破壊)

金属やセラミックスでは非破壊検査が可能なので市場におけるトラブルを防止できる。また、その努力を怠ったときには、それなりのペナルティーを受ける。


いわゆるPLの問題なのだが、破壊に関する形式知の成果として、圧力隔壁の破壊により御巣鷹山で墜落した飛行機事故における裁判がある。


この裁判では金属のフラクトグラフィーが証拠として活用された。すなわち、材料の破壊に関する科学の偉大な成果である。ところが、高分子材料では未だにこのような成果が出ていない。


出ていないというより、未だ出せないのだ。そのあたりの話を来週火曜日に開催される技術情報協会のセミナーで詳しく解悦する。また、デンソーのガソリンポンプのトラブルで発生したホンダのリコール問題についても触れる。


PPS成形体の密度管理を怠ったために発生したリコールだが、実はそれだけではない問題についても解説する。弊社の開発したPh01という添加剤は一つのソリューションだが、来週火曜日(3/26)のセミナーに参加希望の方は弊社へ問い合わせていただきたい。割引券がございます。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.03/09 ゴム・樹脂のトラブル解析

ゴムや樹脂のトラブル解析に、熱分析技術は不可欠である。TGAやDSC、TMAと並んだ文字を見て、すぐに測定法やデータが思い浮かぶようになりたい。


特に実務でこれらの材料の品質管理をされている方は、自分で測定ができるようにしておくとよい。使用頻度としてTMAは他の熱分析法よりも低くなるが、持っているといざという時に役立つ。


注意点として、JISやISOにはDSCを20℃/minで測定するように書いてあるが、TGAを同じ速度で計測すると、一部の情報を見ることができなくなる。TGAは10℃/min以下で測定したい。


困るのは昇温速度が異なると、変化温度の位置が変わるところである。ゆえに、熱分析はすべて10℃/minで計測し比較するようにしたい。


ゴムや樹脂のトラブル解析の大半は熱分析でその原因が見えてくるので、熱分析法を身に着けていると、対策を早く取れる。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2024.03/04 プラスチック製品のトラブル

ゴム製品のトラブルでは、難易度が高い場合に解析困難となる。しかし、熱可塑性樹脂、いわゆるプラスチックでは、何らかの答えを出せる。


加硫ゴムでは添加剤の種類が多いだけではなく、ポリマーブレンドで設計されている場合もあるので、ポリマーの同定が難しくなる場合もある。このような問題では、経験知から推定することになる。


ゴム会社の研究所に勤務していたので、ゴムに関する高度な分析技術とレベルの高いスタッフでも科学的に解析できない問題があることを見てきた。


それでも品質問題では繰り返して起きるトラブルでは、情報が集まってくるので科学的な結論とはならないが経験知の蓄積から対策をとれるようになる。


このような現場を見てきたので、写真感材のさらに難解な品質トラブルに遭遇しても勘所を押さえ、問題解決できた。難解さには、情報が少ないために難解な場合と間違った問題を設定して自分で問題を難解にしている場合がある。


プラスチックのトラブルでは、間違った問題を設定しない限り、ゴムのように解決できない、という問題に遭遇したことは無い。20年近く前の話だが、なんでもケミカルアタックにしてしまうコンパウンドメーカーには驚かされた。


科学の形式知ができていないことに甘えてはいけない。そのような姿勢では、良い品質の製品を送り出すことはできない。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.02/29 熱分析

高分子材料の分析に熱分析は重宝する。分光分析のように分子構造の同定まではできないが、コンパウンドが同じものかどうか、ばらつきはどうかの分析ができる。


TGAやDSC、TMA、動的粘弾性を駆使すると、ゴムやプラスチックのトラブル解析で迅速に結果を出せることをご存知ない方が多い。


ここで問題となるのは、ペレット一粒一粒のばらつきである。同じロットの中で調べてみると、密度は結構ばらついている。DSCでTgのエンタルピーをこの密度と相関を調べてみると、相関のある場合と無い場合があったりする。


TGAで重量減少カーブを調べるとある温度領域の重量減少カーブのところで差異が観察されたりする。こうしたデータを積み上げると、ペレットの生産においてトラブルがあったかどうかが見えてくる。


20年近く前の話だから少し詳しく書くと、某大手の樹脂メーカーが中国のローカルメーカーに委託生産していたコンパウンドの射出成形体でボス割れというトラブルがあった。


外装部品を固定するボスが出荷して1年も経たず割れて外装が外れるトラブルが起きた。コンパウンドにエラーがあって発生しているとおもわれたのだが、コンパウンドメーカーはケミカルアタックを原因として主張してきた。


当方はデータからコンパウンドにエラーがあるので改善を要求したのだが、無視されて同じロットのコンパウンドを納入してきたので、一袋についてペレット一粒一粒検査した。


このようなことを若い人にお願いしたら嫌がることが分かっていたので、土日に当方が実験したのである。単身赴任だったので暇つぶしに楽しめた。数粒評価したところでスが入っているペレットを見つけた。そこで、袋から全部のペレットを床に広げ、すの入っているペレットを拾い出した。


約1割ほどすが入っていたペレットを見つけたので、月曜日にコンパウンドメーカーの営業を呼び、すの入ったペレットだけ見せて意見を聞いた。


さすがに山積みされた劣悪ペレットを前にケミカルアタックとは言えなかったようだ。技術担当と調整して、と言い始めたので、工場の監査をやりたい、と要求した。


詳細を省略するが、中国ローカルメーカーの工場は、5Sに問題は無かったが、熱電対が1本壊れた状態で生産をやっていた。これ以上書かないが、熱分析データから予想されたばらつきだけでなくスが入る原因も理解できた。

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2024.02/28 高分子材料の破壊

セラミックスは、1980年代に起きたセラミックスフィーバーにより、材料科学としての形式知が完成した。1980年以前に書かれた教科書と1990年以降に書かれた教科書とを比較するとそれがよくわかる。


このセラミックスフィーバーは日本発の材料科学におけるイノベーションだが、これがアメリカを刺激してクリントン大統領がナノテクノロジーとバイオケミストリー、バイオリファイナリーの国家戦略プロジェクトをスタートしている。


現在バイオマテリアルがアメリカ中心に展開している所以だが、日本では2000年ごろから高分子材料を巻き込んだナノテクノロジーへセラミックスフィーバーが発展している。


さて、金属やセラミックスでは、その機械的性質に関し形式知の体系が完成したが、高分子ではまだ未完成のままである。ゆえに、金属やセラミックスでは当たり前の非破壊検査法が確立していない。


このことが意外にもあまり知られていないので驚いている。50年も材料科学をセラミックスから高分子までまんべんなく扱っていると、この落差が、高分子技術の難しさにあると思うようになった。


高分子科学を理解するためには、アモルファスとは何か、を知らなければならないが、これが難しい。無機ガラスを理解していると少しその取扱い方と高分子の特殊性が見えてくる。


そもそもアモルファス=ガラスと誤解している人がいる。ガラスではないアモルファスも無機材料では存在するが、高分子のアモルファスはすべてガラスである、と理解している人はよく勉強している。


また、高分子の結晶と無機材料の結晶と少し異なる、いや大いに異なることをご存知か。そもそも結晶成長速度をアブラミ式一発で整理しようとしている問題も気づいてほしい。


3月には技術情報協会で高分子の耐久性と劣化寿命、および材料の破壊についてセミナーが開催されます。是非参加し、勉強していただきたい。また、ゴムタイムズでも企画されており、特にゴムの破壊について学ばれたい方は、こちらのセミナーへご参加ください。弊社へお問い合わせいただければ、サービスさせていただきます。

カテゴリー : 一般 高分子

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2024.02/27 高分子のトラブル

昨日外観不良のブリードアウトについて書いたが、製造段階では検査で見つけられないので、内部不良と捉えた方が良い。


製造段階で起きれば、金型などを汚染するので気がつく。この不良はプレートアウトと呼ばれており、ブリードアウトと区別している。しかし、ブリードアウトが速めに起きただけである。


プレートアウトでも開発設計段階で気がつかないことがある。1000ショットほど射出成形して起き始める、などという悩ましいトラブルだったりする。


ゴムやプラスチックのトラブルで困るのは、季節要因が入ったりする時だ。冬に開発を完了し、春先試作を繰り返し大丈夫と判断したところ、初夏に温度が上がり、トラブルが起きる、ということもある。


ブリードアウトは物質の拡散で起きている現象なので環境温度に左右されやすいトラブルだ。コンパウンド段階で赤道をまたいだだけで起きることもある。


赤道をまたがなくても、中国のような広い国土では、産地によりトラブルの起き方が変わったりする。華南の工場で製造されたコンパウンドで問題が起きたが、華東のコンパウンドは大丈夫だ、などと騒いでいても、本質的な解決になっていない。


高分子のトラブルに対してどのように解析し、対策をしたらよいのか。1か月後に技術情報協会とゴムタイムズでセミナーが行われる。技術情報協会の講師割引券があるので問い合わせていただきたい。

カテゴリー : 一般 高分子

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