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2015.02/28 イノベーション(19)戦略4から5へ

偶然目標の構造や形ができたりすると、あとはロバストをあげる開発を進める、といって突き進んでしまう猪突猛進型の技術者がいる。しかしタグチメソッドを用いて最適化しても十分なSN比が稼げないシステムでは商品化は難しい。6ナイロン相の島にカーボンをくっつけるシステムではSN比を改善できる制御因子が存在しなかった。

 

システム設計が悪いとSN比を大きく改善できる制御因子が存在しないことがある。このような場合にそのシステムで開発を続けてはいけない。新たなシステムを設計し開発を行うのが賢明である。そこで当初の目標とした6ナイロン相の島にカーボンを選択的に分散できるプロセスをシステムとして採用し実験を行った。

 

この詳細はすでに特許で公開しているので詳細を省略するが、バンバリーを用いたのである。バンバリーを用いてPPSの海には6ナイロンの島が浮かび、6ナイロン相にカーボンが分散した構造を作り出して押出成形を行ったところ、抵抗が均一で各物性のロバストの高いベルトが完成した。ただし、靱性は低く、MITは1000以下で実用性が無かった。

 

さて、これを最適化するのか?ここで戦略5(オブジェクトの特徴となっている機能を隠す)真似を実行することにした。すなわち今回前任者から引き継いだ仕事は、PPSと6ナイロン、カーボンで中間転写ベルトを完成するのが目標である。カーボンは抵抗調整のため外せないが、6ナイロンは余分である。

 

しかし、これはQMSの都合で外すことができないので隠すことにした。どのように隠すのか?PPSへ6ナイロンを相溶させて隠すのである。これはものすごいイノベーションを引き起こすアイデアである。科学者はフローリーハギンズの理論に縛られてこのようなアイデアを出すことはできないが、技術者ならば可能である。

 

フローリーがノーベル賞を受賞したことを知っている技術者は少ないのではないか?押出成形の現場でフローリーハギンズの理論を知っていた技術者は一人もいなかった。そのおかげで、この無謀なアイデアをすぐにやろうということになり、実行に移された。そしてカオス混合により製造されたペレットで戦略5は成功し、抵抗が安定なだけでなくMITも10000以上という高靱性のベルトが出来上がった。

 

 

カテゴリー : 一般

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